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1.震度と地震加速度、周期のグラフ

 震度とはなにか、気象庁が発表している下記グラフから考えてみます。建築をする者にとって一般的に木造住宅が倒壊しやすい周期は1秒から2秒とされています。下記グラフはまさにその周期を中心としたグラフとなっています。

 つぎに震度と加速度の関係について、地震を表す震度になぜ加速度が必要なのか。建物への地震の力を求めるとき、作用する力=質量x加速度という法則(ニュートン以来)があり、建物(建物荷重)に地震加速度をかけると建物に作用する力が計算できるからです。

 速度一定の紙に地震計の針が上下に大きく振れている映像をご覧になったことがあるかと思いますが、針の周期的な上下動は速度しか読み取れません。ここで判明した速度と周期から一般式ですが「速度x2πx周期=加速度」で加速度が得られます。地震は東西・南北・上下に揺れるので、この3成分をいろいろ難しい式を通して下記グラフの加速度となります。

 では 具体的にグラフの中から建築基準法の想定した中地震である震度5を読み取ります。震度5の加速度は周期1.5秒あたりでは、50~150cm/sec/secとなっています。震度5強の中地震の揺れは本棚から物が落ちたり、その威力に恐怖を感じると思いますが、震度6強の加速度の建物へ作用する力は、さらに震度5強の中地震の倍以上300~500cm/sec/secになります。本棚から物が落ちるどころではありません。耐震性能の低い建物では命を守る行動をしなければなりません。

震度と地震加速度、周期グラフ

2.震度とその他関連表

 上記のグラフを震度と計測震度、加速度と地震規模を表にすると以下のとおりの連関となります。計測震度と地震規模は私が調べた限りことを下記の表に反映しました。

震度 計測震度

加速度

地震規模
3 2.5以上 3.5未満 5-15  
4 3.5以上 4.5未満 15-50
5弱 4.5以上 5.0未満 50-90 中地震
5強 5.0以上 5.5未満 90-150
6弱 5.5以上 6.0未満 150-300 大地震
6強 6.0以上 6.5未満 300-500
7 6.5以上のすべて 500以上

(加速度の以上、未満は読み替えてください。)

3.地震加速度と層せん断力係数

 下の表は地震層せん断係数を0.100から0.675に変化させると、どのような地震力が作用し地震加速度が増加するか、またその地震加速度が今まで日本列島が経験したどの地震に当たるのかを示しています。独自計算の式は100+(Ci-0.2)*2000としていますが、とってもまるめた数字で計算しています。検証は、各名称が付いた地震にはそれぞれ速度が計算されており、「加速度と速度の仮定式」の結果に整合するかをそれとし、現状その計算式と検証方法に問題はないと思っています。

 たとえば 震度7 地震層せん断力係数(Ci)が0.600の時、建物への地震力が165.7kNとなり、建物の許容せん断耐力の158kNを越えます。Ci=0.600は900galの地震加速度があり、143cm/sの速度で建物を揺らすと考えます。許容せん断耐力を越えた場合は、どこかに損傷が発生する可能性があることを示しており直ちに建物が倒壊するということを意味していません。

※表は横スクロールでご覧ください

耐震等級・計算方式・地震の震度等(途中式はぬいてあります。1階の結果のみです)
評価建物/耐震等級 計算方式 Ci(地震層
せん断力係数)
地震力
(kN)
許容せん
断耐力
表層地盤の
地震加速度
(cm/s/s)(gal)
(独自計算)
速度(cm/s)
(kine)
震度 地震内容 加速度と速度の仮定式
加速度(F)=vx2πf
地震用荷重
276.2(kN)
158.0(kN) 速度(v)=F/2πf
周期(f)=1.0Hz
基準法(壁量計算) 0.200 48.0 158.0 100 16 震度5強 (中地震)
耐震等級2 性能表示 (壁量計算) 0.310 74.5 158.0 320 51 震度6強 まれに発生する地震動
(数十年に1度)
耐震等級3 性能表示 (壁量計算) 0.366 87.7 158.0 432 69 震度6強 (大地震) 極めてまれに発生する地震動(数百年に1度)
耐震等級2 許容応力度 0.375 103.6 158.0 450 72 震度6強
耐震等級3 許容応力度 0.450 124.3 158.0 600 96 震度7 熊本地震前震 92kine
兵庫県南部地震 112kine
耐震等級3+ 許容応力度 0.563 155.4 158.0 825 131 震度7 熊本地震本震 133kine
0.600 165.7 158.0 900 143 新潟県中越地震 148kine
0.675 186.4 158.0 1,050 167 北海道胆振東部地震 157kine

耐震 シン・ローコスト住宅

1.地震力と許容せん断耐力

建築基準法の壁量計算をすることで、震度5の中程度の地震でほとんど損傷しないまたは倒壊しない建物(基準法耐震等級1)を耐震性能の基準としており、その標準層せん断力係数はC0=0.2としています。ただし昨今の震度6強を上回る大地震が頻繁に起こる日本では、建築基準法を守っただけの建物はそれら大地震には対応できないといえます。また震度6で倒壊しないまでも損傷したら、命は守れたけど、家を直したりまたは建て直すことになったらと、お金の心配がでてきます。

ということで、性能表示制度のもと 建築基準法以上の耐震性能を向上させる制度ができました。

この標準層せん断力(C0≧0.2)をもとに地震力を外力とした設計を1次設計(許容応力度計算)と呼び)で対応し、次に震度6・7の大地震時で倒壊しないための層せん断力係数はC0≧1.0とした(2次設計(保有水平耐力計算))で対応すると考えています。許容応力度計算の場合 数十年に1度 80~100galの地震動に対する層せん断力係数C0≧0.2xその他係数を建物荷重に掛けて、損傷しない建物を設計し、保有水平耐力計算では数百年に1度 300~400galの地震動に対するC0≧0.3xその他係数を建物荷重に掛けて倒壊しない建物を設計します。

1次設計と2次設計があるとしていますが、建物荷重は変わりません、重さは同じです。2次設計の保有水平耐力計算のC0は1.0としていますが、建物特性係数等を掛けると実質的な係数は0.3から0.4となります。

地震層せん断力係数がCi=0.45での地震加速度が600galの場合、設計した建物への地震力は124.3kN、それに対し許容せん断耐力は158.0kNです。

耐震等級3(許容応力度)Ci=0.45で計算した建物は、124.3/158.0=1.27なので、地震力より設計した建物のほうが、せん断耐力が上回るので、許容応力度計算において震度7でも損傷しない建物の設計ができていることになります。損傷しないとは倒壊しないことになります。

地震力と許容せん断耐力

2.表層地盤の地震加速度

震度7という「極めてまれに発生する地震(数百年に1度)」であっても、表3-2に示されるように、震度7の表層地盤の地震加速度には範囲が存在します。震度7の「極めてまれに発生する地震動(数百年に1度)」では、地震加速度が500galを超えることがあります。

そこで、地震加速度600gal以上の地震はC0を0.5以上の係数をかけ、等級3以上とした場合の耐震等級3+を考えてみました。係数は(1.25、1.33、1.50、1.60)をかけて建物を評価する計算をしました。

Ci=0.563の地震力までは設計した建物の許容せん断耐力の評価はOKですが、Ci=0.60では震度7の新潟県中部地震ではNGとなります。

NGとなった場合でも、建物が倒壊するかというと、そうではありません。許容せん断耐力は降伏せん断耐力の2/3程度の値と考えると、158.0kN(許容せん断耐力)/2/3≒240kN(降伏せん断耐力)となり、震度7の範囲の地震動では損傷するかもしれないが、倒壊まではしないと考えられます。

表層地盤の地震加速度

4.等級3以上の建物

2×4の仕様規定を守った住宅はほとんどの場合、震度6強までは地震に耐えることが可能な等級3を取得できるはずです。

それ以上の地震を想定した場合、構造の検討が増えます。

具体的には窓を小さくして耐力壁をふやす、内壁に構造用合板を追加する、梁のせいを高くする・等級を上げる、耐震用金物を強化する、基礎幅を増やす、鉄筋径を大きくする等です。

5.シン・ローコスト(2×4工法)とは

2×4工法は特段のメーカー独自工法ではなく、国に認められた標準的な工法です。

大手ハウスメーカーでも小さな工務店でも、2×4の仕様規定を守ることで、おなじ構造品質が得られます。

2×4工法は、あれこれお金をかけずに強度のある建物が得られます。

これを当社はシン・ローコストといいます。

地盤について

1.ハザードマップと地盤

ハザードマップは、各自治体のウェブサイトで確認することができます。

地震に関しては、「J-SHIS」(防災科学技術研究所)で地震動による速度や加速度の詳細を見ることが可能です。

「J-SHIS」が構築されたにもかかわらず、能登半島地震では地震による被害を予測できなかった事実があります。日本ではどこでも大地震が起こる可能性があるため、予期せぬ事態として扱うのではなく、事前に耐震等級3以上の建物を建設することが賢明であると思われます。

2.地盤の評価と対策

地盤の判定は、長期的な地盤沈下、短期的な液状化について判定できます。側方流動は別途検討が必要です。

地盤沈下については、多くの効果的な工法があり、建物への被害はほとんどなくなっています。

液状化対策については、昭和30年代の新潟地震の知見から公共建築物等に有効な地盤へ杭を打つということが効果的な対策となっています。

住宅にも同様なことが適用できます。

地盤の評価と対策
地盤の評価と対策

側方流動は、地域ぐるみで取り組む方がより安全となりますが、私権を制限することのない官地でのインフラ工事や公共工事で取り組む場合が多いようです。

3.地盤と建物

建物の敷地の地盤は外見では判断できません。

地盤沈下対策として20mの鋼管杭を打設した場所は、地盤改良が不要な場所よりも揺れにくく、液状化もしない場合があり、逆に、地盤改良が不要とされる場所でも、揺れやすいことがあります。

さらに、敷地内の位置によっては悪い地盤が見つかることがあり、隣地が問題なくても自分の敷地がNGとなることがよくあります。

地盤が良いとされる地域であっても、地盤沈下が評価された場合、地盤改良または杭打ちで対応可能ですので、それを踏まえて耐震等級3以上の建物を建てましょう。

震度6強以上の地震が、能登半島地震を例にしても予測・評価できていない地震が全国いたるところで発生しています。

耐震等級3以上の建物とすることは決して品質過剰ではありません。